プロジェクトの成功には、チームが継続的に「振り返り」を行うことが不可欠です。しかしこの振り返り、一体どのような手法で行えば良いのでしょうか?
この記事では、多様な振り返り手法を10選ピックアップしてご紹介します。それぞれの手法のメリット・デメリット、おすすめのシチュエーションも解説しているので、是非チームにぴったりな振り返り手法を見つけてください! また、各手法のテンプレートもプレゼントいたします。受け取り方を最後に記載しておりますので、ぜひ最後までご覧くださいませ。
目次
アジャイル開発で重要な「振り返り」とは?
ソフトウェア開発業界の人には馴染みがある話ですが、ある期間の区切りで振り返りのワークショップをチーム内で行うことが重要といわれています。問題解決・アイデア出し・チームの状態を知る・学びを得る・一体感が出るなど様々な効用があるためです。
その背景には、「アジャイル開発」という以下のような思想を持った手法があります。
プロセスやツールよりも個人と対話を、
包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、
契約交渉よりも顧客との協調を、
計画に従うことよりも変化への対応を、-- アジャイルソフトウェア開発宣言
アジャイル開発では、ワークショップを通じて継続的な学びと変化を続けるチームが理想とされています。
チームに合った振り返り手法を見つけよう
その振り返りにも手法があり、アジャイルなチームをつくる ふりかえりガイドブック 始め方・ふりかえりの型・手法・マインドセットという書籍では20もの手法が紹介されています。
今回は、 基本の振り返り手法7選と、主に海外で見られる面白い手法3選、合計10選の手法とテンプレートをご紹介します。
簡単な基本振り返り手法7選
1. KPT
おそらく最も有名な手法で 「Keep・Problem・Try」 の略です。その期間で「続けたいこと」「抱えている問題」「次トライしたいこと」を書き出すやり方です。
それぞれ時間を区切って書き出すことが一般的です。その週の KPT を始める前に前週の KPT を振り返ることも忘れないようにします。
- メリット: Problemで課題を抽出し、Tryで解決策やネクストアクションを挙げることから、早期の課題発見およびスピーディーな改善策の発見ができます。
- デメリット: 「Problem(課題)」という言葉の表現がやや強いため、ネガティブな事柄が注目されやすい可能性があります。課題に捉われすぎず、成果や良かったこと(KEEP)にも注目することで、チームのモチベーション向上につながるでしょう。
- おすすめのタイミング:とりあえず定番の手法から試してみたいとき/チームの課題解決を最優先にしたいとき
2. YWT
「やったこと・わかったこと・次にやること」 の略です。この手法の開発元であるJMACは以下のように YWT の特徴を述べています。
YWTの最大の特徴は、業務を軸としたものではなく、人を軸とした振り返り手法であるということ。YWTは自律的な人の成長を目指す目的で使うのが本質である。
KPTと比べると、「問題」からさらに発展して「わかったこと」まで書かせる点が学びに重きを置いていて、特徴通り、人の成長を第一にしている印象を受けますね。
- メリット: 各項目がシンプルで初心者でも書き込みやすいです。また、全体的に表現がポジティブで、個人の成長を後押しします。
- デメリット: 人の自律や成長を最優先にしたフレームワークのため、チームの課題発見には不十分かもしれません。
- おすすめのタイミング: チームビルディング、個人や1on1など、個人の成長にフォーカスして振り返りをしたいとき
3. DAKI
「Drop・Add・Keep・Improve」の頭文字を取った手法で、「やめること・追加すること・続けること・改善すること」を書き出していきます。
- メリット: すべての項目がネクストアクションそのものなので、やるべきことが明確になり、チームの行動力が加速するでしょう。
- デメリット: 全ての項目がアクションに繋がっていますが、組織形態によっては全ての実現が難しい、あるいは時間を要するかもしれません。例えばDropの欄に「無駄なミーティング」と記載しても、関係者が多い場合、いきなり会議数を減らすことは困難な場合があります。
- おすすめのタイミング: チームの行動力を高めたいとき/社内文化も含めた中長期的なチームの振り返りをしたいとき
4. Win/Learn/Try
「成果報告・学べたこと・次のアクション」 を書き出す手法です。
- メリット:「Win」=勝利という表現が前向きで、達成感を感じられます。
- デメリット: 課題やリスクに当たる項目がないため、潜んでいる問題を見落としてしまう可能性があります。プロジェクト管理で活用する場合は、他の手法も併用するとプラスとマイナスの項目のバランスを保ちやすいでしょう。
- おすすめのタイミング: プロジェクト立ち上げ初期でチームの士気を上げたいとき/期末やプロジェクト終わりの振り返りをしたいとき
5. mad, sad, glad(喜・怒・哀)
「嬉しかったこと」「イライラしたことや不満」「哀しかったこと」を書き出していく手法です。ご紹介している振り返り手法の中で、最も個人の感情にフォーカスを当てています。
- メリット: メンバーの感情にフォーカスすることで、より心地よいチームづくりに役立ちます。
- デメリット: チームの初期段階や、感情をオープンにし合うことに慣れていないと効果を発揮しづらい面があります。
- おすすめのタイミング: チームのコミュニケーション強化を優先したいとき/1on1の面談で、部下や同僚の心情を深掘りしたいとき
6. 4L
4Lは「Liked(好きだったこと・うまくいったこと)」「Learned(学んだこと)」「Lacked(かけていたこと)」「Longed For(望んだこと)」を意味し、それぞれの項目について話し合います。項目が4つに増え、よりバランスの取れたフレームワークになっています。
- メリット: バランス良く成果と課題、学び、そして将来への望みを振り返ることができます。「Longed For」によって未来に対する展望も含められるため、モチベーションを高めやすい利点もあります。
- デメリット: 項目が4つあり、書き込みが多いと議論が散漫する可能性があります。進行方法やタイムマネジメントに気をつけながら進めると良いでしょう。
- おすすめのタイミング: プロジェクトの中間または終了時に、全体的な振り返りを行いたいとき/成果報告とフィードバックを一度に効率よく行いたいとき
7. WRAP
「Wishes(理想)」「Risks(リスク)」「Appreciations(感謝したいこと)」「Puzzles(未解決の問題)」の略です。感謝したいことを述べるフォーマットが印象的です。
- メリット: 前向きな要素(WishesとAppreciations)と、潜在的な課題やリスク(RisksとPuzzles)をバランスよく取り込むことができます。リスクマネジメントにも有用で、問題やリスクを早期にキャッチし、解決策を見つけやすくします。また、感謝という項目があることで、チームエンゲージメントの向上も期待できます。
- デメリット: 具体的なアクションプランまでの導出が、このフレームワークだけでは少々困難な場合もあります。他の手法と組み合わせて使うことで、より効果が発揮されるでしょう。
- おすすめのタイミング: リスクマネジメントとチームの雰囲気づくりを両立したいとき
振り返りが楽しくなる、ユーモアたっぷりな手法3選
ここからは、主に海外で見られる面白い振り返り手法3つをご紹介します。
1. リーンコーヒー
リーンコーヒーとは、構造的でありながらアジェンダが存在しない形式の会議のことです。
公式サイトの手順によると、まず、参加者は「これから議論すること」「いま議論中のこと」「過去に議論したこと」それぞれの項目に付箋を貼っていきます。付箋を貼りあったら、1人2票の投票を行い、各得票数の多いトピックから議論していきます。
- メリット: 形式に縛られない会議で伸び伸びと議論でき、新たな視点やアイデアが湧きやすくなるでしょう。
- デメリット: タイムマネジメントを怠ると、冗長なディスカッションになる可能性があり、注意が必要です。
- おすすめのタイミング: 同じ会議形式や振り返り手法を繰り返し、マンネリしてきたとき
2. 3匹の子豚
この方法は、プロジェクトの進捗を3匹の子豚のストーリーに見立て、話す手法です。「わらの家」「木の家」「レンガの家」という項目に沿って進めていきます。
「わらの家」には容易に崩れてしまいそうなこと、「木の家」は問題はないがさらに改善できること、「レンガの家」は強固で安定していることを書いていきます。
- メリット: 話題が重くなりがちな振り返りでも、楽しみながら進めることができます。また、ストーリーの設定に重ねることで、抽象的な問題も具体的にイメージしやすくなります。
- デメリット: 入門レベルかつチームビルディングに適したものであり、深い分析や詳細な戦略設計には向いていない可能性があります。
- おすすめのタイミング: チームが新しく結成されたばかりで、まずは気軽に振り返りを始めたいとき/重い話題や緊張がある場合、少し和ませつつ真剣に議論を進めたいとき
参考:Three Little Pigs Template | EasyRetro
3. マリオカート
チームの進捗や問題点をマリオカートのコースに見立て、ゲーム感覚で振り返ります。Sailboat Retrospectiveという、プロジェクトを海の上のヨットに喩えた振り返り手法から派生しています。
「きのこ」が自分達にとっての追い風やチャンス、「バナナ」が学びとして生かす失敗、「赤甲羅」が自分達を邪魔したもの、「スター」が自分たちが攻撃から無敵になる必要があること、つまりリスクを回避するべき重要な領域です。
- メリット: ゲーム感覚での楽しさと親しみやすさで、メンバーが自然体で意見を共有しやすくなります。
- デメリット: マリオカートを知らない人にとってはこの手法は理解しにくいでしょう🤔
- おすすめのタイミング: 新しい振り返り手法を試してみたいとき/チームのエンゲージメントを高めたいとき
参考:Mario Kart Retrospective Template | EasyRetro
チームの振り返りにホワイトボードツールが最適な理由
振り返りを行うツールはチームによって様々ですが、共同作業に適していて柔軟性のあるホワイトボードツールを活用することがおすすめです。振り返りでホワイトボードツールを使う3つのメリット3点について解説します。
表計算ツール (Excelなど) |
ドキュメントツール (Notionなど) |
ホワイトボードツール | |
---|---|---|---|
リアルタイム 共同作業 |
✕ | △ | ◎ |
動かしやすさ 視覚的要素 |
✕ | △ | ◎ |
柔軟性 | ✕ | △ | ◎ |
学習曲線 | ◯ | ◎ | △ |
1. リアルタイムでの共同作業が簡単
ホワイトボードツールの最大の利点は、リアルタイムでの共同作業が簡単なことです。
ExcelやGoogle Spreadsheet、Notionなどのツールは、共有には適していますが、複数人で同時に編集するには複雑です。ホワイトボードツールでは、全員が互いを妨げることなく同時に編集と確認ができるので、効率的な振り返りが可能となります。
2. 自由な動作と視覚的要素が充実
前述したツールは数値やテキストには強いですが、物理的な動作や視覚的な要素は限定されています。
ホワイトボードツールでは、付箋を動かしながら、形式に捉われすぎずに議論を進めることができるほか、アイコン、矢印、色分けなどの視覚的要素を簡単に追加できます。付箋を動かしたり色をつけることで、直感的でスムーズな振り返りを行うことができます。
3. 柔軟なカスタマイズが可能
振り返り手法は多種多様であり、それぞれのチームによって最適な手法が異なります。エクセルやWordでテンプレートを用いる場合、そのテンプレートの枠に囚われがちです。
一方で、ホワイトボードツールは柔軟なカスタマイズが可能です。独自のテンプレートを作成することはもちろん、その場で手法を変えるなど、柔軟に振り返りを行えます。
振り返り手法を実践!ホワイトボードツールpostalkの特徴3選
ここまで振り返り手法10選とホワイトボードツールがおすすめな理由を解説してきました。ホワイトボードツールの中でも、「postalk」は以下のような方にぴったりです。
- 手間をかけずに振り返りを取り入れたい
- 振り返りを取り入れてきたが、続かない
そこで、postalkの特徴3つをご紹介します。
- 気軽に始められるシンプルな操作感
- 半匿名性でチームのエンゲージメント向上
- 登録なしで無料で書き込める
1. 気軽に始められるシンプルな操作感
postalkは操作が非常にシンプルなため、誰でもすぐに使い始めることができます。
オンラインホワイトボードは、オンラインツールの中でも難易度が高く、使いこなすまでに時間がかかります。「振り返りだけできればいいのに多機能すぎる」というパターンもよく聞くケースです。
postalkは、パソコン操作に慣れていない方でもすぐに使いこなせるようなシンプルな操作感が特徴です。多機能であることに拘らず「付箋を貼ること」に特化し、エンターキーを押すだけで付箋を作成できるので、「パパッと振り返りをやろう!」という場面に最適なんです。
2. 半匿名性でチームのエンゲージメント向上
対等な意見交換の場をデザインするため、postalkの付箋は「半匿名性」になっています。ボード上の付箋には、だれが書き込んだかの情報は記載されません。
振り返り手法を実践する上で、参加者が書き込みやすい場づくりは非常に重要です。とくに入社したばかりの新入社員は、発言を躊躇ってしまう方も少なくありません。
半匿名性を採用することで、心理的な書き込みやすさを実現し、すべての意見をフラットな目線で見ることを促進しています。
とはいえ、発言者がだれなのかわからないと困る場面もありますよね。そんな時は「カードの投稿者を表示」をオンにしていれば、タイムラインというタブから投稿者を確認することも可能です。チームの醸成具合やシチュエーションで使い分けができることも魅力です。
3. 登録なしで無料で書き込める
postalkのボードは、登録なしでも書き込むことができます。「振り返り手法を実践しよう!」と思ってツールを選定しても、メンバーに登録を促す手間は大変ですよね。
postalkは、ボードのURLを共有するだけでメンバーがアクセス・書き込みできるので、「振り返りを習慣化したいけど、ツールや導入工数は最低限でいい」という方に最適です。
自分に合った振り返り手法でプロジェクト管理を円滑にしよう
いかがでしたか?ご紹介したような振り返り手法は、定期的に行い習慣化することでチームの成果に結びつきます。振り返りを継続するには、かっちりとしたフォーマットに捉われず、「とりあえずやってみよう」と小さく始める精神も重要です。
頻繁に起こる振り返りだからこそ、postalk のようにテキストを書いて動かすだけの「軽く始められる」アプリがマッチしていると感じます。
ご自身に合う振り返り手法を見つけることにpostalkが役立てれば幸いです。
最後に、本記事でご紹介した振り返り手法のテンプレートを、初回登録時にプレゼントしています🎁
ぜひpostalkで振り返りを試してみてください!