議論やアイディアの整理に最適な手法として、昔から多くの方法が提唱されてきました。その中でも、「こざね法」という手法が存在します。この記事では、そんなこざね法と、それを現代のオンライン環境に適応させたツール「postalk」について紹介します。
目次
こざね法とは
こざね法は、梅棹忠夫によって1969年に『知的生産の技術』という書籍で紹介された手法で、紙片に情報やアイディアをすべて書き出し、並び替える思考法です。
「こざね」の名称は、中世の鎧を形取る糸でつなぎ合わせた鉄や皮の小さな板が「小札(こざね)」と呼ばれていたことに由来しています。
文章の構成を考えるときに有効な手法で、1つのテーマについて思い浮かぶワードやフレーズを紙片に書き出し、それらをまとめ並び替えることで、簡単に論理的な文章やアイデアの組み立てができます。
このこざね法、一体どのようなときに使うべきなのでしょうか?生みの親である梅棹忠夫は、こざね法を「単数個人用の、いわば密室むき知的生産技術」と語っています。
わたしがここに紹介したこざね法というのは、単数個人用の、いわば密室むき知的生産技術であって、川喜田君の体系でいえば、比較的素林で、初歩的な技法に属する。
――梅沢忠夫『知的生産の技術』(岩波新書,1969年)p.224
ここで挙げられた川喜田君というのは、KJ法を発明した川喜田二郎のことであり、本中の中でも下記のように評価されています。
KJ法というのは、かれの頭文字をとって命名されたものであるが、異質のデータからいかにして意味のある結合を発見できるかという、いわゆる発想法の体系的技術として、最近たいへん注目されているものである。
(中略)
かれの体系のなかでは、「KJ法B型による文章化」とよぼれているものと、ほぼおなじである。KJ法については、かれの著書『発想法』(中公新書)をよまれることをおすすめする。
――梅沢忠夫『知的生産の技術』(岩波新書,1969年)
私は彼らの書籍が大好きで学生時代に北朝鮮の白頭山を登った際の冒険譚もおすすめです。
※KJ法とは?
フィールドワークするために生まれた手法であり、ブレインストーミングにも活用されています。こざね法と同様に紙片にアイデアを出していき、まとめることでアイデアを具体化していきます。KJ法においては紙片の「分類」の手順がある一方、こざね法は分類はせず、紙片同士の「関連性」を重視している点が違いです。
こざね方のやり方
それでは、こざね法のやり方について紹介していきます。まずは、梅澤忠夫が提唱した紙を使った方法を解説します。手順としては5つです。
1. テーマに関連するキーワードやアイデアを全て書き出す
2. 関連するカードをまとめる
3. まとまりを論理的に並べ替えて、ホッチキスで束ねる(こざね)
4. こざね同士の関係を考える
5. 見出しをつけて、文章を書く
1.すべてを書き出す
こざね法は、考えたいテーマや問題点に関連するキーワードやアイデアをカードにすべて書き出すことから始めます。名刺サイズくらいの紙切れを用意し、テーマについて思いつく言葉を1枚1枚に書いていきましょう。1枚に書く文量はなるべく短く、順番や内容の綺麗さは意識せず、まずは書いてみましょう。
2. 関連するカードをまとめる
紙切れに書き出す作業が終わったら、関連する紙切れをまとめる作業に移ります。
書き出したカードを並べ、1枚ずつ確認し、それと関連するカードを探してカードの集まりを作りましょう。
3. まとまりから論理的に並べ替えて、カードをホッチキスでまとめる(こざね)
カードの集まりを作り終えたら、それらを論理的に並べて、ホッチキスでとめていきます。この、まとまりのことをこざねといいます。
4. こざね同士の関係を考える
こざねが出来上がったら、こざね同士の関係について考えていきましょう。こざね同士のつながりがあればそれらを集め、必要であればこざねを解体して再構成しましょう。
こざね同士でさらにまとまりを作ったら、それらをクリップで留め、それぞれに見出しをつけましょう。
5. 見出しをつけて、文章を書く
ここまでの4ステップで、文章構成に必要なピースが揃っているはずです。あとは、こざねの構成を考え、文章を作成していきましょう。起承転結で並べたり、時系列にしたり、状況によって柔軟な構成ができることが、こざね法の良さですね。
こざね法を行うメリット
こざね法は、文章をどうやって書いていけばいいのかわからなくなった時にとても有効です。こざね法を行う最大のメリットは、物事の関連性や全体の流れを直感的に理解できることです。また、カードを物理的に動かすことで、新たな組み合わせや視点が見えてくることもあります。複雑なテーマや多くの情報を効果的に整理するのに役立つ方法でしょう。
オンラインでこざね法を実践できるツール「postalk」
postalkとは
postalkは、コミュニケーション領域に特化したホワイトボードツールです。オンライン上で手軽にこざね法のような情報の整理や議論ができるのが特徴です。
postalkを使って、オンラインでこざね法
こざね法を紙で試すと、管理が大変です。そんな時におすすめなのがpostalkです。
postalkは、いつでも使えるデジタルホワイトボードです。こざね法に着想を得ており、オンライン上で簡単にこざね法を取り入れることができるんです。
ここからは、実際にpostalkを使って、オンラインでこざね法を試してみたいと思います!
テーマ:旅行の計画
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テーマについて、思いつくフレーズを付箋にどんどん書いていきます。どんな旅にしたいのか、交通手段はどうするかなど、頭に浮かんだことをランダムに書いていきます。
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言葉を書き出す作業が終わったら、関連する付箋同士をまとめていきます。
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付箋のまとまりが出来ました。だいぶ整理ができましたね。次は、このまとまりそれぞれについて深く考えるために、まとまりからボードを作っていきます。この段階で書くまとまりの題材が明らかになっているので、まずはそれぞれに見出しをつけましょう。
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まとまりからボードを作成しましょう。複数の付箋を選択して右クリックし、「選択カードでボード作成」を選択しましょう。
まとまりからボードを作成すると、下記画像のようになります。
また、スクロールしてボード下部まで行くと、それぞれのボードがネットワーク構造でつながっていることを確認できます。
- それぞれのボードで、見出しテーマについて考えを深めていきましょう。各ボードで考えを深めたら、全体のプランが明確で詳細になっていきます。
このように、こざね法は、大きなテーマを噛み砕いて考えるシーンで活用できます。
postalkなら、オンラインで完結できるため、管理が簡単です。ネットワーク構造も相まって、情報の関連が分かりやすいこともメリットです。
文章を書く場面以外にも、複数人で同時に共有・編集することもできるので、チームのブレインストーミングやチームの戦略を立てる際にも活用できます。
こざね法を取り入れた背景
現代の迅速な情報社会の中でも、古くからある「こざね法」や「KJ法」のような手法が有効であるのではないかという狙いがありました。『知的生産の技術』にはこのような一節があります。
くりかえしていうが、今日は情報の時代である。社会としても、この情報の洪水にどう対処するかということについて、さまざまな対策がかんがえられつつある。個人としても、どのようなことが必要なのか、時代とともにくりかえし検討してみることが必要であろう。
よみ、かき、計算ができる、というのは近代市民としてあたりまえのことである。現代では、それだけではすまなくなってきているのである。たとえば、電話帳のようなものでも、単に宇がよめるというだけでは、つかいこなせないものである。百科事典とか、図書館とか、そんなものも、よみ・かきだけでは利用できない。書類の整理、検討、発表というようなことになると、これはかなりの訓練がいる。今日では、情報の検索、処理、生産、展開についての技術が、個人の基礎的素養として、たいせつなものになりつつあるのではないか。
――梅沢忠夫『知的生産の技術』(岩波新書,1969年)p.16
この本の初版が1969年ですが、当時から情報社会に対する危機感はあったはずです。「こざね法」や「KJ法」が生まれた背景には、情報化の流れが強く影響しているでしょう。
わたしがこの本に出会ったのは数年前ですが、まったく色あせないどころか、ソフトウェアができることはたくさんあるのではないかと大変刺激をうけました。
梅棹忠夫や川喜田二郎たちが提唱した「知的生産の技術」を現代のテクノロジーで活用しながら、より効果的なコミュニケーションを実現したいというおもいからpostalkは開発が進められました。
postalkでこざね法を試してみよう
デジタル時代においても、知的生産の手法は非常に有効です。こざね法を使えば、なにか文章を書きたいときや頭の中を整理するときにとても有効です。postalkならではの方法として、付箋の集まりからボードを生成することができますし、さらにボードを付箋に見立ててボード同士の関係について考えることができるのは、postalkでしかできない体験です。
ぜひ、postalkでのこざね法を活用して、より深い議論や知的生産を行ってみませんか?